訪問マッサージで行う機能評価と目標設定について(後編)
お世話になっております。ダヴィンチ治療院、院長の神田です。
今日も、前回に引き続き、体験訪問(初期評価)についてのお話をさせて頂きます。
後編として、『マッサージ師の立場から見る機能評価と目標設定』について考えていきます。
ご承知の通り、私は理学療法士とあん摩マッサージ指圧師の資格を取得していますが、両者の教育カリキュラムは大きく異なっています。
リハビリ(理学療法士)とマッサージの違い、といったこともあるでしょうが、教育の主体も大きく異なっています。
解剖学、生理学などの基礎医学、それに病理学や運動学などの学問も共に学んでいきますが、
理学療法士の学生過程では、理学療法評価学、検査法などに時間をかけており、言わば、「機能評価=患者の見立て」を学んでいきます。
一方、マッサージ師の学生過程では、これらについてはほぼ触れず、マッサージやあん摩、指圧などの手技(実技)に時間をかけます。
つまり、理学療法士は治療の前の見立てを学び、マッサージ師は実際の治療法を学ぶ、ということです。
そこで分かることは、理学療法士は治療手技について学校ではほとんど学ばない、土台作り(評価・検査)を3~4年かけて行うということです。
つまりは、病院などの医療機関、介護施設などの現場に出てから、臨床経験・治療技術を培いましょう、ということです。
研修やセミナーなども充実していますから、こうした形が取れるのでしょう。
当院の患者様においても、訪問リハビリと一緒に入っているケースが多いですが、
患者様は、訪問リハビリでは、マッサージなどの手技が下手、ストレッチと歩行だけ、訓練ばかりしかしてくれない、などのことをよくおっしゃります。
積極的にセミナーや研修で学び、実力をどんどん付けていかないと、こうした評価になる可能性は大です。
学校で評価、見立てを学んでも、中身の実技を学んでいないのですから、致し方ないでしょう。
それを補って、初めて大きな治療成果、患者様に貢献できるリハビリサービスの提供が図れると思います。
さて、
それに引き換え、マッサージ師の学生過程では、治療手技の時間を多く設けています。
そのため、マッサージや指圧、あん摩などの単体の治療は非常に得意としています。
実際に当院の患者様からも、気持ちがいい、楽になる、身体が柔らかくなった、浮腫みが減った、などの声がよく聞かれます。
ただ、翌週になると元に戻ってしまう、長い期間でみると、維持はできているが向上は図れていない、ということも多くあります。
これは、長期的な目標が立てられておらず、患者様の病態や機能評価などもしっかりなされていないことが要因です。
しっかりとした筋道を立てて、計画的に治療を行っていかないと、大きな成果には至りません。
ここが、マッサージ師において圧倒的に不足している点です。
私もマッサージ師の学生として、3年間学びましたが、
せっかく手技を学んでも、使い方がなっていない、勿体ないといつも思っていました。
なぜ、ここが柔らかくなったのか、よくなったのか、逆に良くならなかったのか、
理由を聞いても、即答できるマッサージ師はほとんどいません。
学生時代に、評価法や検査法について、ほとんど学んでいなかったためでしょう。
さて、話を今日のテーマに戻しますが、
これらの話から、『マッサージ師の立場から見る機能評価と目標設定』となれば、
学校では学んでいないこと、関連性が薄い、分からない、というのが率直なところだと思います。
ダヴィンチ治療院を開設し、訪問スタッフへの教育を10年以上行ってきましたが、
実際にスタッフへ教育する立場からも、評価の土台となる部分があまりに不足しており、
未だに私が最も苦労していることの一つ、と言えます。
何せ、検査や評価の基礎が無いのですから、教えようがない、というのが実際のところです。
過去には、評価やリハビリの勉強会を多く行いましたが、後ろ向きな考えのスタッフ、マッサージ師には必要ない、と口にすることも度々ありました。
学生過程において、評価の必要性を教えていないのですから、こうなるのも当然と言えますが、
臨床の現場では、命のやり取りが常に行われており、正しい見立てがあり、初めて治療の提供が可能となります。
分かっていないのに触れる、治療する、ということは大変危険なのです。
逆に、悪化させてしまうことさえあり得ます。
私が訪問看護ステーションで訪問リハビリを行っていた時代(13・14年前)、
ある訪問マッサージのマッサージ師が、収縮期血圧が220mmHg以上ある患者様を、
バイタル計測などを行わず、毎回施術し、車椅子にも移乗していた、ということが日常的にありました。
その方は、パーキンソン病と脳梗塞を併発しており、15分ごとの痰の吸引なども必要であり、重度の方でした。
何も検査や評価を行わずに、毎回、施術を行っていたマッサージ師に対し、いつも危ないと思っていました。
何度かご家族を通して、バイタルの計測、リスク管理を図ってから施術した方がいいともお伝えしましたが、
会社の方針に則っている、職場の先輩、指導者から言われたように行っている、という回答で、全く改善がありませんでした。
結果として、約1年で亡くなってしまいましたが、もし、訪問時に状態が急変していたら大変です。
バイタルも図らずに運動、移乗などを行っていた、しかも医療サービスで、という話になります。
評価や検査の重要性を基礎として教えていないと、こうした考えが根付き、不測の事態を招きやすくなります。
本来であれば、会社や職場に関係なく、バイタル計測などは、医療従事者として然るべきことです。
しかも、医療保険を用いた訪問マッサージサービスなのですから、尚更です。
ダヴィンチ治療院では、施術前のバイタル計測(血圧・脈拍・サチュレーション・体温など)を必ず行っています。
バイタル値が高値、低値である、他の自覚症状、他覚的所見で気になることがある場合には、施術スタッフから私に電話が必ずあり、
施術の可否について、施設やご家族・本人への報告の仕方などについても確認がなされます。
これが医療サービスの基本(当たり前)であると思います。
少々脱線してしまいましたが、
再度話を戻すと、マッサージ師の「機能評価と目標設定」ということに関しては、
マッサージ師はこのことを習っていないため、とにかく言葉に慣れていくこと、それが必要で当然と思うこと、から始めなければなりません。
そのためには、繰り返し、繰り返しのスタッフ教育が必要ですが、
それ以上に大切なのは、実際に機能評価や目標設定などの見本を見せること、そうした治療環境を常に敷くこと、と考えます。
当院においては、私が体験訪問を行い、その際に必ず初期評価表を作成します。
作成した評価表は、患者様の担当スタッフのみならず、院内全員が確認できるようにしていますし、
担当以外の患者様の評価表、フェイスシートについても見るように指導しています。
私の作成した評価表を毎回みて、なぜそうなっているのか、どういう考えか、について何度も考えていくことで、
自然と評価の考え方や仕方、目標設定やプログラム作成、などについても体にしみこんでいきます。
私は常に全力で初期評価を行っていますので、
それを見続ける、理解しようと努力し続けることで、評価力が徐々に付いてくると思います。
このやり方は、当院独自であり、当院だからできるシステムとなっていますが、
自分で最初からやってもらう、というのではなく、できたものを見続ける、という方が楽ですし、努力も継続しやすいです。
おかげ様で、今は機能評価や治療目標、プログラム作成などの手順において、皆、前向きに取り組んでいますし、
訪問マッサージの基準として、これが実践できているのは、全国的に見ても、非常に珍しいのではないかと考えます。
私も常に努力をし続け、スタッフを牽引する力となり、評価や目標設定が重要なこと、
評価の過程を経ることで、それがいずれ大きな成果に繋がるのだと、実際の臨床を通して伝え続けたいと思います。
今回のお話は、これにて終わりとさせて頂きます。
最後となりますが、今回の評価表、目標設定については、ブログテーマのみならず、
研究発表のテーマとしても、取り上げました。
具体的には、『アクティブ福祉in町田22』にて研究発表を致しました。
テーマは、「訪問マッサージにおける目標(ゴール)設定の有用性」となっています。
研究発表は、12分の動画として作成し、先日、11月9日には発表が行われました。
審査結果として、昨年に引き続き、『在宅部門 優秀賞』を受賞しております。
一昨年の審査員賞、昨年・今年の在宅部門 優秀賞とで、3年連続での受賞となりました。
これも皆様のご支援のお陰と思います。
当院のYouTubeチャンネル(D-tube)にアップしておりますので、よろしければ、ご覧頂ければと思います。
今ブログの最後にも、動画を添付いたしました。
昨年の研究発表も一緒に再アップしました。
合わせてご覧いただくと、また違った側面が見えて、内容も面白いのではないかと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
町田市・多摩市・稲城市・多摩エリアの訪問マッサージ
ダヴィンチ治療院 理学療法士・あんまマッサージ指圧師 神田 裕幸
アクティブ福祉in町田22の研究発表動画です。在宅部門の優秀賞を頂きました。
アクティブ福祉in町田21の研究発表動画です。昨年も在宅部門の優秀賞を頂きました。