廃用症候群から考える、訪問マッサージの仕事
お世話になっております。
練馬区の訪問マッサージ「練馬の手」の訪問施術スタッフ、岩井将人です。
10月も後半となり、秋らしさを感じる季節になってきました。
練馬では9月後半に、ジャズを楽しむイベントも開催され、街の中で音楽に触れる機会がありました。
ジャズといえば「リズム」。
一定のリズムの中で、サックス、ピアノ、ベース、ドラムなど、
それぞれ異なる役割を持った楽器が重なり合い、一つの音楽を作っていきます。
実は、私たちが訪問マッサージの現場で向き合っている「人間の身体」にも、これと少し似たところがあります。
筋肉、関節、神経、呼吸、循環。
それぞれが単独で働くのではなく、互いに連携することで「起きる」「座る」「立つ」「歩く」といった動作が生まれます。
今回は、
「動かないと身体はどう変わる?―廃用症候群から考える、訪問マッサージの仕事」
というテーマから、訪問施術の仕事について考えてみたいと思います。
■訪問現場で出会う「動かなくなった身体」
訪問マッサージでは、高齢や疾病などによって通院が難しくなった方のお宅や施設へ伺います。
そのため、臨床では「活動量が低下している方」と接する機会が多くあります。
入院をきっかけに歩く機会が減った。
転倒が怖くなり、ほとんど立たなくなった。
ベッドや車椅子で過ごす時間が長くなった。
こうした状態が続くことで問題となるのが「廃用症候群」です。
身体を動かさない状態が長く続くと、筋力低下だけでなく、関節可動域の低下、拘縮、心肺機能の低下など、全身にさまざまな影響が現れることがあります。
訪問施術では、こうした身体の変化を実際に確認しながら、その方に何ができるのかを考えていきます。
■「筋肉を揉む」だけでは見えてこないもの
訪問マッサージという言葉から、「高齢者の身体をマッサージする仕事」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
もちろん、筋緊張や循環などを考えながらマッサージを行うことは大切です。
しかし、実際の臨床ではそれだけではありません。
例えば、下肢の筋力が低下している方がいたとします。
そこで必要になるのは、単に大腿部や下腿部を施術することだけではなく、
「なぜ動かしにくくなっているのか」
「関節可動域はどうなっているのか」
「座位は安定しているか」
「立ち上がる際にどこへ重心が移動しているか」
「日常生活ではどの程度身体を動かしているのか」
といった視点です。
身体を局所だけで見るのではなく、その方の生活や動作まで含めて考える。
ここに訪問施術ならではの面白さがあります。
■小さな変化を見つけることも臨床です
訪問施術では、必ずしも大きな変化だけを追いかけるわけではありません。
「今日はいつもより足首が動いている」
「端座位が少し安定している」
「自分から足を動かしてくれた」
「立ち上がったときのふらつきが少なかった」
「表情が明るく、会話が増えた」
こうした小さな変化も、その方の身体状態を把握するための大切な情報です。
反対に、
「今日は覚醒状態がいつもと違う」
「呼吸が浅い」
「浮腫が強くなっている」
「皮膚の状態が普段と違う」
といった変化に気付くことも重要です。
毎週継続して訪問するからこそ、前回との違いを比較できます。
これは病院などとはまた違った、訪問の臨床ならではの特徴だと思います。
■「できる動き」をどう残していくか
廃用症候群を考えるうえで重要なのが、現在残っている身体機能をできるだけ活用することです。
歩行が難しい方であっても、すべての運動ができないわけではありません。
足関節を動かす。
膝を曲げ伸ばしする。
ベッド上で寝返りを行う。
端座位を保持する。
足踏みをする。
立ち上がる。
利用者様の状態によって、できることはそれぞれ違います。
施術者には、その日の体調や身体機能を確認しながら、「今日はどこまで行うか」を判断することが求められます。
昨日できなかったことが今日はできることもあれば、反対に普段できていることを控えた方がよい日もあります。
決められた内容をただ繰り返すのではなく、身体を評価しながら施術内容を組み立てる。
そこには、あん摩マッサージ指圧師としての知識と経験を生かせる場面が数多くあります。
■身体にも「リズム」がある
ジャズでは、それぞれの演奏者が周囲の音を聴きながら、自分の役割を果たしていきます。
身体も同じように、筋肉だけでは動けません。
神経から指令が伝わり、筋肉が収縮し、関節が動きます。
さらに、呼吸によって酸素を取り込み、心臓や血管によって全身へ運ばれます。
それぞれの機能がつながることで、一つの動作が成立しています。
訪問施術でも「痛い場所だけを見る」のではなく、身体全体のつながりを考える視点が重要になります。
そして訪問という仕事では、さらに「生活」という要素が加わります。
どんなベッドを使っているのか。
どのような姿勢で過ごしているのか。
普段どの程度歩いているのか。
ご家族や介護職の方がどのように支援しているのか。
利用者様の生活そのものを見ながら身体を考えられることは、訪問施術の大きな特徴です。
■訪問だからこそ学べる臨床があります
教科書で筋肉や関節について学ぶことはできます。
しかし、一人ひとり異なる身体と向き合い、「この方には何が必要なのか」を考える力は、実際の臨床経験を積むことで少しずつ身についていきます。
訪問マッサージでは、高齢者の身体機能、廃用、拘縮、姿勢、歩行、日常生活動作など、さまざまな課題と向き合います。
だからこそ、
「マッサージの技術だけではなく、身体や動作についてもっと学びたい」
という方にとって、経験を積める仕事の一つではないでしょうか。
ジャズがそれぞれの音を重ねながら一つの音楽を作っていくように、訪問施術も施術者だけで完結するものではありません。
利用者様、ご家族、介護職、ケアマネジャー、看護師など、さまざまな方との連携によって在宅生活を支えていきます。
その中で、私たちあん摩マッサージ指圧師だからこそできることがあります。
身体を触り、動きを確認し、その小さな変化を継続して見守っていく。
そして、その方が今持っている「動ける力」をできるだけ生活につなげていく。
そんな訪問施術に興味のある方と、一緒に働ける機会があれば嬉しく思います。
訪問マッサージ「練馬の手」では、利用者様一人ひとりのお身体の状態に合わせ、
マッサージや関節運動、機能訓練などを行っています。
これからも利用者様の日々のお身体の変化にも目を向けながら、
安心して生活を続けていただけるよう、訪問施術を通じてサポートしてまいります。
当院の訪問エリアですが、主に以下の通りとなっております。
東京都(練馬区)、埼玉県(和光市、朝霞市、新座市、志木市)
引き続き、よろしくお願いいたします。
訪問マッサージ「練馬の手」
訪問スタッフ あん摩マッサージ指圧師 岩井 将人
