11月30日 研修会を終えて ― ダヴィンチの手が大切にする医療哲学と、臨床家としての成長環境 ―
ダヴィンチの手では、11月30日に院内研修会を実施いたしました。
本研修は、日々の訪問施術における技術確認や実技練習にとどまらず、
私たちが臨床の根幹として位置づけている「和医道」という医療観、
そして施術者としてどのような姿勢で患者様と向き合うべきかを、改めて深く共有する場として開催されました。
ダヴィンチの手が目指しているのは、単なる「施術を行う治療院」ではありません。
患者様の人生、生活背景、価値観を尊重しながら、
身体と心の両面に働きかけ、本来その方が持っている回復力を最大限に引き出す医療を実践することです。
訪問という制限のある環境だからこそ、一つひとつの判断、触れ方、声かけに高い専門性と人間性が求められます。
その中核にあるのが、私たち日本人が大切にしてきた「和医道:日本人の医療」という考え方です。
そして、和医道を実際に医療手技として体系づけたのが和医術です。
和医術の根底には、「人間は本来、自己調整能力と自己回復能力を備えた存在である」という明確な医療観があります。
病気や不調は、外から何かを足すことで一方的に治すものではなく、
生活習慣、身体の使い方、心理的ストレス、環境要因などが複雑に絡み合った結果として現れている状態です。
つまり回復とは、壊れたものを修復するというよりも、
本来備わっている機能や調和を取り戻していく過程であると私たちは捉えています。
この視点は、慢性疾患や長期間にわたる機能低下を抱える患者様と向き合う訪問医療において、極めて重要な意味を持ちます。
和医術では、慢性病についても
「その人自身の人生や生活の積み重ねの中で形づくられてきたものであるからこそ、回復への糸口もまた、その人自身の内側に必ず存在している」
という考え方を基本に置いています。
これは決して、患者様の努力不足や自己責任を意味するものではありません。
むしろ、回復の主体は常に患者様自身であり、施術者はその力が発揮されるための環境を整え、方向性を示し、伴走する存在であるという医療観です。
研修では、身体への直接的なアプローチだけでなく、施術者の意識や言葉が患者様の身体反応に与える影響についても深く掘り下げました。
訪問の現場では、施術者がどのような意図で触れているか、どのような言葉を選んでいるかによって、
筋緊張、呼吸、表情、動作の質が大きく変化する場面を日常的に経験します。
ポジティブな可能性を感じさせる言葉は、患者様の安心感を高め、身体の防御反応を緩めます。
一方で、施術者の中にある不安や諦め、先入観は、言葉にしなくとも必ず手を通して伝わってしまいます。
だからこそダヴィンチの手では、「できない理由」を探すのではなく、
「今、何ができるのか」「これから何が引き出せるのか」に目を向ける臨床姿勢を大切にしています。
この姿勢は、患者様だけでなく、施術者自身の成長にも大きく影響します。
研修の中で繰り返し共有されたのは、施術者の内面の在り方こそが施術の質を決定する、という点です。
「この方はもう改善しないかもしれない」「年齢的に仕方がない」
そうした考えが一瞬でも浮かんだとき、その意識は必ず施術の質に反映されます。
和医術では、
「この方の身体は、今も回復へ向かおうとしている」
「身体は、必ず何らかの反応を返してくれる」
という前提に立ち続けることを、施術者としての基本姿勢としています。
この信頼があるからこそ、微細な身体反応を感じ取り、その日の状態に応じた最適な介入が可能になります。
施術者自身が身体の可能性を信じ切れるかどうかが、臨床の質を大きく左右します。
研修では、「病気」という言葉の語源にも改めて触れました。
病気とは「気が病む」と書きます。
ここでいう「気」とは、生命を維持し、成長させ、調和へ導く根源的な力です。
和医術では、この「元の気」の巡りが滞ることで、身体や心に不調が現れると考えています。
私たちの施術は、筋・関節・神経系への物理的なアプローチにとどまらず、
気の巡りを妨げている要因を見極め、本来の流れを取り戻すことを目的としています。
研修中には、5円玉と糸を用いた実験を通じて、不同意筋や予期意向といった無意識下で起こる身体反応を体感しました。
人の身体は、意識している以上に多くの情報を受け取り、正直に反応しています。
この事実を体感として理解することは、臨床家として非常に重要な学びとなります。
後半の実技研修では、背部リコイル、肩甲帯PNF、骨盤帯PNFといった、ダヴィンチ治療院の臨床を支える基礎手技を徹底的に確認しました。
これらの手技は単なるテクニックではなく、身体全体の連動性、支持性、可動性を引き出すための重要なアプローチです。
また、鍼灸師の先生方は鍼の実技研修を行い、刺激量、刺入角度、施術意図の共有を通して、より安全で効果的な介入について理解を深めました。
さらに、起き上がり、立ち上がり、移乗、歩行といった動作介助や、
CKCアプローチを用いたリハビリテーションについても実践的な練習を行い、訪問現場で求められる対応力を再確認しました。
今回の研修を通じて改めて明確になったのは、良い施術は技術だけでは決して完成しないということです。
技術、医療観、人間観、患者様への敬意、施術者自身の在り方。
これらすべてが統合されたとき、初めて本質的な臨床が成立します。
ダヴィンチの手では、施術者が学び続け、成長し続けられる環境であることを何よりも大切にしています。
定期的な研修や症例共有を通じて、技術だけでなく、臨床家としての視点や在り方そのものを磨き続けることを重視しています。
もし、訪問医療の現場でより深い臨床を実践したい、流れ作業の施術ではなく一人ひとりと本気で向き合いたい、
技術だけでなく医療観や在り方も磨きたいと感じている先生がいらっしゃいましたら、ダヴィンチ治療院は必ず大きな学びと成長の場になるはずです。
志を同じくする先生方と共に学び、共に悩み、共に成長していけることを、私たちは心より願っております。
訪問スタッフ あん摩マッサージ指圧師 岩井 将人
